オーガニックやベジタリアンなど、健康的な食事に関するキーワードはたくさんあります。マクロビオティックも人気のある食事法で、さまざまな場面で聞かれることが増えてきました。マクロビオティック食にとって玄米はとても重要な位置付けとされています。マクロビオティックの基本的な意味や、具体的な食事内容などを知り、理解を深めていきましょう。
この記事の執筆者・監修者
管理栄養士 佐々木優美 先生
講師業の傍ら、料理や健康に関する記事の執筆やレシピ作成をしています。人によって料理に求めるものは違いますが、私の理想は心も体も満たせる料理を作ることです。野菜をたっぷり使った彩り豊かな健康食が好きで、なるべく植物性食品を多く摂れるように心がけています。忙しい生活を送る人が多い時代ですが、食事から体をいたわることの大切さも伝えていきたいです。
マクロビオティックの基本
マクロビオティックという言葉は聞いたことがあっても、実際にどのような食事を指すのかわからないという方もいますよね。ここでは、マクロビオティックの基本的な意味や考え方についてご紹介いたします。
マクロビオティックとはどんな意味?
マクロビオティックとは、玄米菜食に則った植物性食品中心の食事をいいます。1950年頃に体系化され、その後欧米を中心に広がりを見せました。
マクロビオティックの目的は、日本の伝統的な食事をベースとして自然と調和しながら、健康的な食事を送ることです。マクロビオティックは「マクロ=大きな」、「ビオ=生命」、「ティック=術、学」の三つの言葉のギリシャ語から成り立っており、「自然に即した命のあり方」という意味を持ちます。
マクロビオティックの二つの原則
マクロビオティックには二つの原則があります。
身土不二(しんどふじ)
暮らしている土地のものを食べるという、地産地消と同じような意味合いを持ちます。人も植物も環境と一体であり、切っても切り離せない関係であるという考えに基づきます。旬の食材を、新鮮なうちにそのまま食べることが、健康に生きるために大切なことだとされているのです。
一物全体(いちぶつぜんたい)
「一つのものを丸ごと食べる」という意味の言葉です。食物は固体全体で生命のバランスを保っており、例えば野菜であれば可食部と呼ばれる部分だけでなく、普段捨ててしまうような根や皮の部分なども食べたほうが良いとされています。マクロビオティックにおいて精米をしない玄米が良いとされているのは、この考え方によるものです。
「陰」と「陽」に傾きすぎないのがマクロビオティック
東洋医学においては頻出する「陰」と「陽」の考え方ですが、マクロビオティックにおいてもこの考えかたが用いられています。陰と陽とは具体的にどのようなことを指すのかというと、例えば、きゅうりは暑い季節に旬を迎えることから体を冷やすと考えられており、冬の食材であるゴボウは体を温めるとされています。
季節や地域、体温などの温度と食材を結びつけて陰と陽を分類し、体調や体質に合わせて食材を選んでいくのが漢方などの東洋医学です。マクロビオティックは、陰と陽のどちらにも偏りすぎない方が良いとされており、根菜や穀類、豆類などの中間に位置する食材を中心にとり入れていきます。
マクロビオティックにおける玄米の位置付け
先ほども述べたとおり、マクロビオティックには玄米は欠かせないものであり、基本中の基本となっています。マクロビオティックは、一物全体の考えに基づき、根や皮などの普段捨ててしまうような部位も全て無駄なく使用します。そのため、糠を取り除くことなくそのままの状態で食べる玄米は、マクロビオティックの教えに沿うものなのです。
また、栄養面においても、精白米よりも玄米の方が優れている点は多くあります。同じ量のご飯を食べるとき、精白米よりも栄養価の高くなる玄米の方が、健康面でのうれしい作用が期待できるかもしれません。玄米の優れている点は次のようなポイントです。
・食物繊維が豊富
籾殻の部分には食物繊維が多く含まれています。精米をして籾殻を取り除いてしまうと、食物繊維が大幅に減ってしまいます。そのため、食物繊維を多く含む玄米は便秘改善や腸内環境を整えるのに良いとされているのです。
・ビタミンB1が多い
玄米の栄養的な特徴として、ビタミンB1が多いことが挙げられます。ビタミンB1は糖質のエネルギー代謝を助ける働きがあります。ビタミンB1を十分に摂取することは、糖質の体内利用率をアップさせ、効率的にエネルギーに変換させるということです。このことからも、玄米は脂肪の蓄積や生活習慣病予防などに役立てられる食品だといえるでしょう。
・カリウムが多い
精製されていない玄米は、精白米よりもカリウムを多く含む傾向にあります。カリウムの役割は、ナトリウムの排出を促すことで、むくみ改善に有効です。カリウムは生野菜や果物に多く含まれる栄養素で、加工品の多い食生活をしていると不足しがちになります。主食を玄米にすることで、カリウムの摂取量をアップさせることができます。
マクロビオティックは、食べ物を大切にしながら健康的な生活を送ることを目的としています。玄米はこの2つの重要なポイントをどちらもカバーできるものであり、マクロビオティックにとっては欠かせない、中心的な存在であることがわかります。
特に現代人は、加工品の摂取増加に伴い、食塩摂取の増加や食物繊維不足などの栄養に関する課題が挙げられています。今は白米優勢の食生活ではありますが、おかずが十分に摂取できなかった頃は、玄米から必要な栄養素を摂取していました。かつての背景に倣い、食生活の乱れや栄養バランスが偏っている方は、玄米を中心としたマクロビオティック食を試してみるのも良いかもしれません。
マクロビオティックの具体的なメニューとは?
いざマクロビオティックを実践してみようとしても、実際にどのような食事をすればわからないという方も多いでしょう。玄米を主食にするだけでマクロビオティック食だといえるわけでもありません。マクロビオティックと呼ばれるおかずやおやつにはどのようなものがあるのかをチェックしてみましょう。
野菜の煮物
根菜から豆類など、さまざまな食材を調味料で味付けして煮物にします。肉じゃがや八宝菜など、具材の多いものはメイン料理として、カボチャやれんこんなどの煮物は副菜として活躍します。煮物を作るときは、基本的には調味料を少なめにし味付けを薄く仕上げましょう。また、皮はなるべく落とさず、そのまま付けて調理をすることで旨味を閉じ込めることができます。
肉料理・魚料理
マクロビオティックというと、肉や魚などの動物性食品は食べないイメージがあるかもしれません。しかし、実際にはそのような決まりはなく、肉や魚を使って作られることもあります。例えば、麻婆豆腐といえば中華料理のイメージですが、できるだけ廃棄する部分をなくし、野菜を皮ごと使ったり、地域の食材を加えたりすればマクロビオティックな料理ということもできます。マクロビオティック=ベジタリアンではありませんので、身土不二、一物全体の考えにならえば、動物性食品を使っても全く問題はありません。
おやつ
マクロビオティックなおやつというとどのようなものを想像しますでしょうか。おやつにもはっきりとした定義があるわけではありませんが、食べ物のありのままの形を活かせるものや、住んでいる地域でとれる食材を加工したものがマクロビオティックと呼ぶのには相応しいでしょう。例えば、畑で採れたじゃがいもを、きれいに洗って皮付きのままポテトチップスにする、人参を皮付きのまますりおろしてジャムにする、などが挙げられます。収穫されたばかりの野菜は、強い旨味を持ち、無駄に味付けをしなくても十分に美味しく感じられます。自然のままの味を活かせるのがマクロビオティックの良いところです。
マクロビオティックは自分のペースで
マクロビオティックは、「このような食品を摂りなさい」という細かい決まりがあるわけではありません。身土不二と一物全体の考え方に沿っていれば、どのような料理でもマクロビオティックなものに変えることができるともいえます。
また、ストイックにマクロビオティックを実践してしまうと、途中で挫折してしまう原因となることもあるので気を付けましょう。何品かあるうちの一品をマクロビオティックにしてみたり、週に2回の週末だけ実践したりするなど、自分の続けやすいペースで問題ありません。マクロビオティックは難しく捉えすぎずに、自分のライフスタイルに合わせながら実践していくことが大切です。