たくさんの種類があり、異なる風味を楽しめるワインは年々人気の高まりを見せています。かつては高級なイメージを持たれていたワインですが、近年ではコンビニワインなどの登場によりカジュアルにワインを嗜む人が増えてきました。こうしてワインを飲む機会が増えてくると、気になってくるのが栄養のこと。ここでは赤ワインと白ワインそれぞれについて、どのような栄養が含まれているのかを詳しく解説していきます。
この記事の執筆者・監修者
管理栄養士 佐々木優美 先生
講師業の傍ら、料理や健康に関する記事の執筆やレシピ作成をしています。人によって料理に求めるものは違いますが、私の理想は心も体も満たせる料理を作ることです。野菜をたっぷり使った彩り豊かな健康食が好きで、なるべく植物性食品を多く摂れるように心がけています。忙しい生活を送る人が多い時代ですが、食事から体をいたわることの大切さも伝えていきたいです。
日本でも高まるワイン需要
かつては高級なレストランで飲むお酒のイメージが強かったワインですが、近年では1,000円以下で美味しく飲めるワインが販売されていたり、コンビニで購入できたりと私たちにとってはどんどん身近な存在になってきています。
こうしてカジュアルにワインを楽しめるようになったことで、2020年代では一人あたりのワインの年間消費量が1990年代の約2倍の量になりました。お酒のなかでもワインを選ぶ理由としては、お洒落や贅沢感などのファッション性から来るものが多く、特に若い世代においてはそのような傾向が強く見られるようです。
ワインはフランスやイタリアなど、主にヨーロッパの国々を中心に嗜まれてきたお酒ですが、日本には外国の食文化が伝わるとともに広まってきました。さらに、日本国内のぶどうのみを原料とした国産のワインが製造されるようになり、幅広い層から支持を得ています。このような背景を考えると、ワイン需要の高まりはこれからも右肩上がりになっていくと推測できそうです。
さらに、ワインが人気の理由の一つとして、健康効果を期待する声があります。フランスの食生活はバターや肉などの油脂を多く摂取しますが、そのような食事をしてもフランス人はアメリカ人に比べて冠状動脈性疾患にかかる割合が少ないことがわかっています。これは、ワインに含まれる成分の効果ではないかと考えられており、「フレンチパラドックス(フランスの矛盾)」と呼ばれています。
こうしてワインの消費量が多い国の食生活と病気の関連を調べたときに、ワインには何か健康に良い成分が入っているのではないかと考えられはじめ、研究が進められ明らかになってきたという流れがあります。
ワインの健康効果はポリフェノールから
残念ながら、ワインには栄養素と呼ばれるものがほとんど含まれていません。これは、生化学で定義されている栄養素の意味合いが、人が生きていくために必須の成分というものだからです。ワインには栄養素はほとんどありませんが、摂ると身体に有益な作用をもたらしてくれるポリフェノールという成分が含まれています。
さまざまな場面でポリフェノールの有効性が注目されるようになり、ポリフェノールがどのようなものなのかを知っていたり、なんとなくその言葉を耳にしたりしたことがある人もいると思います。言葉を聞いただけでも身体に良さそうな成分であることは感じていただけることでしょう。
ポリフェノールは植物が光合成を行う際に生成される成分で、植物性食品の色や苦味、渋みなどのもとになっています。例えば、お茶やコーヒーの渋み、野菜、果物などの色素が代表的で、ワインには主原料となるブドウにポリフェノールが含まれています。
ポリフェノールの代表的な働きは抗酸化作用です。体内には細胞を酸化させたり老化の原因になったりする活性酸素が生成されますが、ポリフェノールは抗酸化作用によって活性酸素の働きを弱めたり、発生を抑えたりしてくれるため、生活習慣病の予防や老化防止に良いとされているのです。
ワインには原料の違いによって主に赤ワインと白ワインがあります。それぞれポリフェノールの量や栄養価にどのような違いがあるのかを見ていきましょう。
赤ワインのポリフェノールについて
赤ワインは黒ブドウを原料にしており、果皮と果実を一緒に発酵させてから圧搾して果汁を分離します。本来黒ブドウの果実は白っぽい実なのですが、果皮を付けたまま発酵させることで深い赤みのあるワインを作ることができるのです。
ワイン好きの方はご存知かもしれませんが、赤ワインには白ワインには感じられない渋みがあります。これはポリフェノールの一種であるタンニン由来のものです。タンニンは熟成させている期間に、ブドウの果皮や種、茎などの部分から生成される他、オーク材の木樽からも生成されます。また、ブドウの果皮に含まれるアントシアニンという成分もポリフェノールの仲間です。
赤ワインといってもたくさんの種類があるため、ポリフェノールの含有量が全て同じというわけではありませんが、平均的には赤ワイン1Lあたりのポリフェノール含有量は2~6gとの報告があります。ポリフェノールは、1日あたり1~1.5g程度摂ると良いとされていますので、赤ワインだけで考えるとコップ2~3杯程度が適量となる計算です。
赤ワインに合うとされている料理は肉料理です。肉料理は脂身の部分から脂質をとり過ぎたり、ソテーやフライなどの調理方法によっても脂質の摂取量が増えたりしますので、ポリフェノールの多い赤ワインと合わせるのは、栄養学的にも理にかなっているといえるでしょう。油の多い料理を食べるときや、ポリフェノール効果を期待して飲むときは赤ワインがおすすめです。
白ワインのポリフェノールについて
白ワインが赤ワインと違う点は、原料に白ブドウが使われていることや、製法でいうと発酵前に皮を取り除いて果汁を熟成させているという点です。白ワインは赤ワインと比べるとすっきりとした味わいで、渋みもほとんど感じられません。
ポリフェノールは渋みや色素の成分となっていますので、あっさりとした風味を持つ白ワインにはポリフェノールがあまり含まれていないことが想像できます。もちろん白ワインにも多少ポリフェノールは含まれていますが、赤ワインと比較すると1/10にまで減ってしまうそうです。このことからも、ポリフェノールの摂取目的でワインを飲むときには、白ワインではなく赤ワインがおすすめです。
赤ワインが肉料理に合うとされるのに対して、あっさりとした風味の白ワインは魚料理におすすめされています。白ワインには殺菌作用があり、魚の臭みをとる効果もあるため、魚料理を美味しく食べたいときには是非白ワインを選んでみてください。
健康を意識して選ぶなら白ワインよりも赤ワイン
ワインには生化学的に定義されている「栄養素」と呼ばれる成分はほとんど含まれていません。しかし、その代わりに有効成分であるポリフェノールが含まれており、生活習慣病予防や老化防止などの健康効果が注目されています。ポリフェノールを多く摂りたいときは赤ワインがおすすめ。ワインの飲みすぎには十分に気を付けながら、美味しい料理と合わせて楽しんでくださいね。