玄米は食物繊維やビタミンミネラルなど、不足しやすい栄養素が豊富に含まれています。高い栄養価は玄米のメリットでもありますが、外皮があるためパサパサしたり、粒が固いと感じたりする人もいるようです。このような難点のある玄米は、お粥にすることで消化がよくなり食べやすくなるなど色々なメリットがあります。ここでは、玄米からお粥を作る方法や、アレンジレシピをご紹介いたします。
この記事の執筆者・監修者
管理栄養士 佐々木優美 先生
講師業の傍ら、料理や健康に関する記事の執筆やレシピ作成をしています。私の理想は心も体も満たせる料理を作ることです。野菜をたっぷり使った彩り豊かな健康食が好きで、なるべく植物性食品を多く摂れるように心がけています。忙しい生活を送る人が多い時代ですが、食事から体をいたわることの大切さも伝えていきたいです。
玄米と白米の美味しさ
玄米は優れた栄養面が特徴的ですが、これは外皮に包まれているためです。精米して外皮を除いた白米では、栄養のある部分が落とされてしまっています。しかし、それでも白米が好まれているのはやはり「美味しい」と感じる人が多いからでしょう。
玄米は独特の風味があり、苦手だと感じる人もいます。玄米の匂いのもととされている原因は、周りに付いている米糠に含まれる脂質で、これが空気と触れて酸化するためです。
このような玄米独特の糠臭さを軽くするために、塩やヨーグルトを加えて炊飯する方法も知られています。そのまま食べても美味しく食べられる白米に比べて、玄米を美味しく食べるためにはひと手間の工夫が必要なのです。
また、玄米は白米に比べると固い食感があります。噛むトレーニングには向いているかもしれませんが、パサパサしていて美味しくないと感じる人もいるかもしれません。一度玄米生活を始めてみてもなかなか続けられない人がいるのは、食感や風味による食べづらさが原因の一つです。
玄米は消化に悪い?
食事を食べ過ぎたり早食いをしてしまったりすると、胃酸の分泌が追いつかずに消化不良を起こす場合があります。
食物繊維は難消化性物質であり、そもそも消化されない栄養素です。玄米には食物繊維が多く含まれているため、白米よりも消化に時間がかかってしまいます。
そんな玄米の消化を良くする食べ方としては、よく噛んで食べる、柔らかく炊き上げるなどの方法があります。現代では柔らかい食べ物が増えており、日本人の咀嚼力は低下しているといわれています。食べ慣れた白米から玄米に変える時は、しっかりと噛むことを意識しながら食べましょう。
お粥は消化を良くする食べ方
お粥は吐いたり下したりと消化器官が弱っているときの食事に適しています。白米のお粥は定番ですが、玄米でもお粥にすることができますので是非試してみてください。玄米粥は次のような人におすすめです。
ビタミン・ミネラル不足の人
玄米にはビタミンやミネラルが多く含まれています。普段の食事で野菜や海藻類をとり入れていないとビタミンミネラルは不足しやすくなります。ビタミンミネラルを補給できる玄米は主食として優秀な食品です。玄米粥は消化が良く、栄養バランスの良い食事をしたい人におすすめです。
実際に、白米のお粥を玄米粥に変えた場合の栄養価の変化を見ていきましょう。(重量50g)
・ビタミンB1 0.01mg→0.08mg (約8倍)
・鉄 0.1mg→0.3mg(約3倍)
・カリウム 15mg→48mg(約3倍)
このように、同じ量のお粥でも栄養価が大きく変わる栄養素もあります。普段副菜からビタミンミネラルを摂取できていない人は、主食を玄米に変えるだけでも栄養価の高い食事に変えられますよ。
ダイエットをしている人
お粥は出汁やスープでお米を煮るため、少ない量でもボリュームを出すことができます。そのため、ご飯の量を抑えられますので、食事からのカロリーが減ります。野菜やきのこなど、低カロリーの食材でボリュームアップをしたり、よく噛んで食べたりすることで満腹中枢が刺激されやすくなり、少ない量でも満足感が得られやすくなりますよ。
それでは、玄米ごはんをお粥に変えたときのカロリーの変化を見てみましょう。
・玄米ごはん 150g →228kcal
・玄米粥 150g→76kcal
玄米粥に使用したご飯の量を50gとすると、約1/3のカロリーに抑えることができます。カロリーは低くなりますが、見た目のボリュームはしっかりとあるので食べ応えがあります。しかし、お粥はごはんに比べると腹持ちが悪いので、野菜などを加えて満足感をアップさせましょう。
基本の玄米粥の作り方
白米と同様、玄米粥もお米から作る場合とご飯から作る場合があります。それぞれの作り方をご紹介していきます。
お米から作る玄米粥
1合の玄米を使う場合、ちょうど良い水の量は900ml〜1Lです。
玄米をサッと洗って、鍋の中で2時間ほど浸水させておきます。その後、ひとつまみの塩を加えて中火にかけ、ぐつぐつ煮立ったらひと混ぜし蓋をして、弱火で60分加熱します。
ご飯から作る玄米粥
残ったご飯を玄米粥にする場合は、ご飯の量の1.5〜2倍程度の水を加えてお粥を作ります。ご飯と水を鍋に入れ、焦がさないように15〜20分ほど煮ると完成です。
お米から作るよりも、ご飯から作る方が簡単で時間もかかりません。余った玄米ご飯がある時は是非お粥を作って有効活用しましょう。
玄米粥の保存方法
玄米ごはん同様、お粥も保存しておくことができます。しかし、水分含有量が多いため、ご飯と比べると品質が低下しやすいのでなるべく早く食べるように心がけてください。玄米粥の保存は、冷凍保存が最も適しています。冷凍する際は保存容器に入れ、なるべく早く冷凍できるように金属のバットなどに乗せて冷凍室に入れましょう。
玄米を使ったお粥アレンジ
おかずが準備できればシンプルなお粥でも良いのですが、時間がないときなど1品で済ませたいときは玄米粥をアレンジして色々な食べ方を楽しんでみましょう。
リゾット風
味のついたスープで煮込む洋風のお粥です。チーズやトマト、カレー風味などバラエティ豊かな味付けを楽しむことができます。ベーコンや鶏肉、きのこ、野菜などをたっぷり使って具沢山に仕上げると食べ応えが増します。
雑炊風
和風だしやめんつゆなどで味をつけたお粥です。梅干しや三つ葉、大葉、サバ缶など調理の手間がいらない食材をストックしておけば、いつでも簡単に食べることができます。脂質が少なく優しい味わいで、体調が優れないときにもおすすめです。
中華粥
日本でお粥というと体調が悪いときに食べるイメージがありますが、中国では毎日朝に中華粥を食べる習慣があります。使用されているお米は日本のように粘り気と甘みのあるものではなく、長くパサパサとしたお米が使用されており、だしやスープなどの味が楽しまれています。完全に同じものを再現するのは難しいですが、粉末の中華だしを使用すれば本場の中華粥に近いものを作ることができるでしょう。生姜やネギなどの薬味が使われるので、滋養強壮にもおすすめです。
このように、基本の玄米粥をベースにしてさまざまな食べ方を楽しむことができます。味付けをすることで、玄米独特の風味も気になりづらく、食べやすくなります。普通の食べ方に飽きてしまったときには、味付けを変えて作ってみましょう。
玄米粥は消化が良くカロリーも抑えられる!
玄米粥は玄米のパサパサとした食感や独特の風味が苦手な人には特におすすめの食べ方です。使用するお米の量が少なくカロリーを抑えられるため、ダイエットにも適しています。栄養バランスが気になるとき、体重が気になるときなど、様々な場面で玄米粥をとり入れてみましょう。