牛肉といえば、「焼き肉」や「すき焼き」。ハレの日には豪華な料理で食卓に華を添えてくれる食品です。牛肉は、鶏肉や豚肉に比べると高級なイメージを持つ方が多いかもしれませんが、ハンバーグや肉じゃがなどの家庭料理にも使われていますので、食べる機会は意外と多いのではないでしょうか。この記事では、牛肉の栄養価や部位による栄養の違いなどについてご紹介します。
この記事の執筆者・監修者
管理栄養士 佐々木優美 先生
講師業の傍ら、料理や健康に関する記事の執筆やレシピ作成をしています。私の理想は心も体も満たせる料理を作ることです。忙しい生活を送る人が多い時代ですが、食事から体をいたわることの大切さも伝えていきたいです。
和牛と輸入牛のカロリーの違い
牛肉は、大きく分けると国産牛(和牛)と輸入牛に分けられ、この産地の違いによって栄養価もかなり変わってきます。同じ量で比べてみると、輸入牛よりも和牛の方が脂質の含有量は高く、カロリーが高めになっている場合がほとんどです。ブランド化された高級和牛の「霜降り」は美味しさの指標でもありますが、同時にカロリーを高くしてしまう原因にもなるので注意が必要です。
また、部位によってもカロリーの違いは知っておいて損はありません。牛肉のよく食べられる部位について、和牛と輸入牛それぞれのカロリーを比較してみましょう。
もも肉(脂身付き) 和牛 235kcal 輸入牛 148kcal
リブロース(脂身付き) 和牛 514kcal 輸入牛 212kcal
サーロイン(脂身付き) 和牛 460kcal 輸入牛 273kcal
3つの部位のカロリーを比較してみると、どれも輸入牛より和牛の方がカロリーは高くなっています。部位によっては2倍の差にもなる場合がありますが、これは脂質の含有量の違いによるものです。脂の多い肉は口どけが良く、甘味やうま味を感じられやすいのですが、太る原因にもなるので注意が必要です。まずは、同じ牛肉でも、和牛と輸入牛のカロリーには大きな差があるということを知っておきましょう。
調理法によるカロリーの違い
肉を加熱するには、焼く、茹でる、煮る、炒めるなどの調理法があります。様々な調理法のなかで、最もヘルシーな調理法はどれだと思いますか?
肉の脂は調理によって落とすことができる場合もあります。まずは、お湯で数分間茹でること。そして次に、網焼きです。
まずは、茹でる調理法の例として、しゃぶしゃぶを考えてみましょう。熱いお湯に肉を浮かべると、脂が溶けてあくとなって浮いてきます。こうして残った肉は、溶けた脂の分カロリーを落とすことができますので、カロリーを抑えることができます。
また、焼き肉やバーベキューで網焼きをするときに、肉の脂が溶けて下に落ちるのを見たことがあるでしょうか。こうして脂を下に落とす方法でもカロリーダウンさせることができます。
カロリーを高めてしまう調理法には炒めたり揚げたりといったものがあります。炒め物ではさらに油を足すことになりカロリーが高くなりますし、揚げ物の場合には油を吸うことになりますので、こちらもカロリーは高くなります。
ここでは、調理法によって料理や食品のカロリーが変わってしまうこと、工夫次第でカロリーダウンができることを知っておきましょう。一般的な調理法では、調理法の違いによる食材のカロリーは、茹でる<網焼き<蒸す<煮る<炒める<揚げるの順番に高くなっていきます。少しでもカロリーを落としたいときは茹でるか網焼きにするのがおすすめです。
100gの牛肉では、茹ででは20kcalほど、網焼きでは10kcalほどしか落とすことができないようですが、多少なりともヘルシーな食べ方ができるのはうれしいですよね。
牛肉にはどのような栄養素・メリットがあるの?
ここまでは、主に牛肉のカロリーについて解説してきました。ここからは、カロリー以外の部分にも注目をして、牛肉の栄養について見ていきたいと思います。それでは、牛肉に多く含まれる栄養素を見てみましょう。
たんぱく質
牛肉はたんぱく質の補給源となる食品です。100gあたりのたんぱく質含有量は、部位によって差がありますが、平均15~20gほど含まれています。たんぱく質は筋肉や血液、臓器などの体の組織を構成する栄養素です。通常の食事をしていれば不足は起こりづらい栄養素ですが、食事制限をしたり、偏った食生活をしたりすると不足することもあるので注意が必要です。
鉄
牛肉は、鶏肉や豚肉と比べると鉄が多く含まれているのが特徴です。鉄はミネラルの一種で、赤血球の構成成分となっており、全身の組織に酸素を運ぶ役割をしています。鉄は特に月経のある女性に不足しやすい栄養素で、鉄欠乏性貧血を防ぐためには鉄を多く含む食品を摂取することが大切です。
亜鉛
亜鉛はたんぱく質の合成に必要な栄養素で、新陳代謝をサポートします。また、舌に存在している味を感じるための細胞「味蕾(みらい)」の構成にも亜鉛が関わるため、不足すると味覚障害を起こすことがあります。亜鉛は汗にも含まれているので、スポーツをする人やダイエットで食事制限をしている人に不足が見られることがあります。
このように、牛肉はたんぱく質源となる食品で、鉄と亜鉛が多く含まれているのが特徴です。鉄は体に吸収されにくい栄養素なのですが、牛肉に含まれる鉄は比較的身体に吸収されやすいとされています。普段の食事では鶏肉や豚肉に偏りすぎないように、適度に牛肉もとり入れることで幅広い栄養素を取り込みやすくなりますよ。
牛肉を食べるならどの部位がおすすめ?
焼き肉屋さんに行くと、サガリやカルビなど様々な肉の種類がありますよね。これは、牛肉のどの部分の肉を使っているのかによって名称が異なっているのです。この部位の違いは、風味や食感だけではなく、栄養価にも違いが出てきます。
例えば、人気の高いサガリは牛の横隔膜であり、柔らかい食感を持っています。肉質は赤みの部分が多く、カロリーは比較的低めです。また、カルビは韓国語ではアバラを意味するお腹の肉のことをいい、脂質が多めでカロリーの高い部位となっています。
牛肉といってもいろいろな部位があり、それぞれカロリーが違うということはチェックしておきましょう。ここでは、輸入牛100gあたりの代表的な部位別カロリーを以下にまとめました。
サガリ 283kcal
カルビ 338kcal
もも 148kcal
リブロース 212kcal
肩ロース 221kcal
サーロイン 273kcal
ヒレ 123kcal
このように、同じ重量の牛肉でも一番高いものと低いものでは約200kcalも違いがあります。この違いは脂質の含有量によるもので、高いものは脂身が多く、低いものは赤身の部分が多いものになります。カロリーが気になるときは、できるだけ赤身の多い部位の牛肉を選んでおくと安心ですよ。
カロリーを意識しながら牛肉を選ぼう
牛肉はたんぱく質の補給源となる食品であり、鉄や亜鉛などのミネラルの補給源となります。ミネラルは鶏肉や豚肉には多く含まれていない栄養素なので、程よくバランスをみながら献立を考えていけると良いですね。また、牛肉のカロリーをまとめると、和牛は輸入牛よりもカロリーが高く、脂身の多い部位は赤身の部位よりもカロリーが高くなるということになります。カロリーの低い部位を覚えておくと、焼肉屋さんへ行ったりスーパーで購入したりするときに役立ちますよ。